導入:健康保険が違うと何が変わるのか?
病気やケガは、事業をストップさせる大きなリスクです。このリスクに備える健康保険には、主に「国民健康保険(国保)」と「会社の健康保険(主に協会けんぽ)」の2種類があります。
病院で3割負担になるという点は同じですが、家族の保険料負担や、仕事を休んだときのサポート制度に決定的な違いがあります。これらの違いは、ご自身の家計と事業の人件費に直結します。
本記事では、この2つの健康保険の違いに焦点を当てて解説します。
1. 最も大きな違い:「扶養制度」の有無
国民健康保険と会社の健康保険の最も大きな違いは、「扶養(ふよう)制度」の有無です。
- 国民健康保険の場合:
- 扶養という概念がなく、加入する家族の人数が増えれば、その分保険料も加算されます。
- 家族それぞれが、保険料を負担して加入する必要があります。
- 会社の健康保険の場合:
- 被扶養者の制度があります。収入などの要件を満たせば、家族(配偶者や子どもなど)は保険料の負担なしで、本人の保険に加入することができます。
特に家族を持つ方が法人設立を検討する際、会社の健康保険の扶養制度を利用できることは、世帯全体の保険料負担を大きく軽減する最大のメリットとなることがあります。
2. 保険料の計算方法と負担の割合
保険料の計算方法と負担の割合も大きく異なります。
| 項目 | 国民健康保険 | 会社の健康保険 |
| 計算のベース | 前年の所得や自治体のルールなど。 | 毎月の給与に基づく「標準報酬月額」。 |
| 保険料の負担 | 全額自己負担。 | 事業主と加入者(従業員)が半分ずつ(折半)負担。 |
【保険料の折半によるメリット】
会社の健康保険に加入する場合、給与から天引きされる保険料は全体の約半分で済みます。この「折半」の仕組みにより、一見給与が高くても、実質的な自己負担は国民健康保険よりも少なくなるケースが多くあります。
【保険料の計算上限】
所得が高い事業主の場合、国民健康保険料には上限がありますが、会社の健康保険料にも上限(標準報酬月額の上限)があります。事業所得が非常に高い場合は、上限額に達した後の保険料の差額も比較検討が必要です。
3. 病気や出産で休んだときの「手当金」の有無
病気や出産などで仕事を休んだときの公的なサポートも異なります。
- 傷病手当金:
- 会社の健康保険には、病気やケガで連続して休んだ場合、最長1年6ヶ月間、給与の約3分の2が支給される「傷病手当金」があります。
- 国民健康保険には、原則としてこの傷病手当金の制度はありません。
- 出産手当金:
- 会社の健康保険には、出産で休んだときに支給される「出産手当金」がありますが、国民健康保険にはありません。
まとめ:事業形態の変更は「安心の質」の変更
事業形態を個人から法人へ変更することは、単に税金の計算が変わるだけでなく、**「いざというときの安心の質」**が変わることを意味します。
特に扶養家族がいる方や、傷病時の収入途絶に不安を感じる方は、会社の健康保険(協会けんぽ)の持つメリットを十分に考慮して、事業のあり方を判断しましょう。